綱手は任務から戻ってきたばかりのツイナに、昨夜サクラとサスケの間であった事を、報告されたその内容を伝え、シカマルに与えた指示の事も伝えた…
「うちはがね…となるとやっぱ裏で糸を引いているのは大蛇丸…昨日からの音の奴らは木ノ葉暗部への陽動の為の捨て石にされたってところか…まあ奴らが狙ってきた物が物だけに、全員を捨て石にする気はなかっただろうけどね」
普段通りの口調で、まるでなんでも無い事の様に言うツイナの様子に、綱手は、ツイナが現在(いま)素の状態であるというのに、彼の本心を読みかねていた…
…ツイナが…個人として…本心から何とも思っていないのか…
…それとも…
…『奥を継ぐ者』として生まれる前から…そのらせんによって引き継がれ…担う事になった様々なモノがゆえに…
…その重責ゆえに…そうなのか…
…綱手は読みあぐねていた…
…そして同時に…
…師である三代目・猿飛ならばどうだろう?と…
…ツイナ否この子供の養い親であった師ならばと…
…或いは自分がもっと早く…とも考え…
…埒も無いと頭を振る…
…既に過ぎ去りし過去に想いを馳せても詮無い事だと…
…所詮は感傷…どうあがいてもやり直せはしないのだと…
追跡任務―3―
「…綱手ばあちゃん、現在(いま)シカマルが家に来たって影分身から連絡が入った」
その言葉に綱手は思考を現実に引き戻された…
「…そうか…」
…ツイナの一族に伝えられる秘術…それを用い彼等は特殊な情報伝達を互いに行う事が出来るという…(…但し状況や能力差により個人差はあるという…)
…他者との情報の伝達を可能とするその能力を以てすれば、元々己が生み出した影分身である…意識はもとより、精神領域の根幹から繋がっているそれは…
…どれほど離れていようとも…チャクラが続く限り持続させ続ける事が可能なのである…
…尤も…その影分身は…秘術やその礎たる能力によって、改良を加えられたものであるからこそだという…
…それは血継限界とも異なる特殊な能力…
…幼い頃…生まれた時…生まれる前…
…彼の一族が受け継ぐ秘術は…
…その儀は早ければ早い程良いとされ…
…そうして行われ始める特殊な修行により…
…その能力は磨かれるという…
…そして彼の一族は定まった姓名を持たない…
…幼き頃より行われるそれにより…完全に彼等は忍として在るがゆえに…
…それゆえ数多の隠し名を持ち、その時により用いる名が異なるために…
…ただ何時の頃からか彼の一族は『木ノ葉の或いは火影の奥』という二つ名で呼ばれる様になり…
…そして彼の一族の長は『奥継』という二つ名で呼ばれる様になっていた…
…裏の世界の存在である忍その更に裏の裏…最奥に隠れた一族…
…彼等は一族そのものとしては決して表には出ない…
…それゆえ彼等の存在は木ノ葉でも限られた、極一部の存在達しか知らない…
…綱手は火影を継ぐ前から知ってはいた…多少ではあるが…彼等の事を…
…初代火影の孫であり、三代目火影の弟子であった関係から…
…しかし知っていたのはその存在と重要性についてだけ…内実についてはまるで知らなかった…
…昨日侵入してきた音の忍が盗み出そうとした巻物は、歴代の火影に受け継がれる『火影と奥継のみにしか開く事は敵わぬ秘伝の巻物』であり、それには『奥継』やその一族について書き記されていた…
…尤も…『最も重要な…決して他者に知られてはいけない様な重要な部分については』それには書かれてはいないのだが…
…それでも他里ましてや音否大蛇丸の手に渡して良い様な物ではなく…
…だからこそ『巻物』の真贋を見極める事が出来る『奥継』であるツイナが出向き、それに関わった者を鏖殺し、『巻物』を取り戻して来たのだから…
…綱手は里に戻り火影を継いですぐその『巻物』の存在をご意見番と自来也より聞かされ火影邸内を捜した…
…その時はご意見番は兎も角何故自来也が…とも思ったが…
…ともあれそれを見つけ…その後…当時噂で聞き知っていた『木ノ葉の凄腕の暗部』『奥のツイナ』に出会い…
…そうして初めて知った事だった…
―続く―