…目の前の…薄紅の狐面を着けた暗部姿の子供…
 …三代目には『ユイ』と呼ばれ…ビンゴブックには『(木ノ葉の)奥(の手)(切り札)のツイナ』とのみ記されている凄腕…

 …初めて『彼』と出会った時の事が…綱手の脳裏を過ぎる…

 …綱手は…火影となって…初めて『彼』の素性を知り…
 …そして苦悩した…
 …其の『重さ』に…
 …そして…悔やみ…決意した…

 『自分』は『何が』あっても、この『子供』の『味方』だと。
 いまは亡き師に代わり、『自分』が『この子』の『保護者』(親代わり)になろうと…
 …『家族』も『味方』も確かに『いる』には『いる』けれど…『甘える事』のできる『相手』が極端に少ないこの『子供』の『家族』(親代わり)になろうと…

 …決意したその想いを抱えながらも口を開く…

 …命を下す為…

 …『火影』として…


 
追跡任務―4―


 「…ではユイお前のことだ、皆まで言わずとも解ってると思うけど…」
 綱手の言葉を遮る様な形でツイナが口を開いた…
 「…解ってるよ、まずは『下忍のうずまき』にやらせろって言うんだろ?『暗部のツイナ(俺)』はあくまでフォロー役…うちはは『出来るだけ生かして連れ戻せ』って言いたいんだろ?しかもうちはの納得ずく…つまりうちはは『自主的に戻ることに』意味がある…暗部が力ずくで連れ戻したんじゃあ後が厄介…俺としては無理矢理でもいいだろうにって思うけど?相手が大蛇丸だから慎重になるのも解るけど…元々うちはを甘やかしたのが悪かったんだ…だから里抜けなんかして…忍失格だね…『サスケ』のヤツ…」
 …そう言いツイナが面に手をやり、それを外し、冷めた表情(かお)でニィと冷笑(わら)い…
 「…そんな奴に、いくら名家だからって気を使ってやること無いんじゃない?俺に任せてくれたら幾らでも対処するよ?『奥』が…里に必要なのは『サスケ』じゃなくて『うちは』なんだし…『イタチ』は流石に俺と同等だから一寸無理があるけど…『サスケ』なら…『忍失格のサスケ』が『邪魔』なら『奥(俺達)』があいつを抹消(け)すよ?ばあちゃん?『それ』も『役目』の内だしね…」
 …そうツイナは蒼い瞳を挑戦的に閃かせ口角を僅かに吊り上げる。
 「…駄目だよユイ…それじゃあ駄目なのはお前自身よく解ってるだろ…木ノ葉に必要なのは『優秀な忍』で『ただの忍具』じゃない……それは…『お前』も含めてだよナルト…」
 …そう言いながら綱手はゆっくりと席を立ち…ツイナいやナルトの所まで行き…ゆっくりと愛おしげに触れ抱き締めて続きを言う…
 「…お前は『忍者』だ…『人間』なんだ…決して…『封印器(うつわ)』と言う名の『忍具(どうぐ)』じゃない!たとえ一族の役割の一部にそういうモノが入っていたとしても!たとえお前が『それ』に最も最適な能力を!血継限界を持っていて、現実として里がお前に『その役割』を背負わせているとしても!…それでも!『お前』は『人間』なんだ!…だから…そんな悲しい事は言わないで…『真実(ほんとう)』の『お前』の『心情(こころ)』をもっと大切にしな…確かに現在の里には『奥継』としての『鳴門(お前)』が必要だ…でも…もっと『お前』は…『お前』を大切にしても良い筈だよ…『成人(個人)』としての『成人(お前)』をね……『お前』は本当は…もっと『あいつら』が大切なんじゃないのかい?…『切り捨てたくない』と『失いたくない』と思ってるんじゃないのかい?」
 「…俺は…別に…本当に…」
 …きつく抱き締められながら…ナルトは…ポツリと力無く呟く…
 「…ナリ…『お前』はその心をもっと大切にしなきゃいけない…『お前』になら出来る筈だよ…心を刃で殺すのではなく…『心(じぶん)』という銘の『刃』を『制御』し『真実(ほんとう)』に『大切』な『存在(モノ)』を『護る』為に『真実(ほんとう)』の意味で『強く』なることが…」 
 …綱手は少しだけ身を放し…ナルトの肩に手を置いて…その現在は…碧いその瞳を見つめて言う…
 …ナルトの髪や瞳そのチャクラの色は…その時々に応じて変化する…
 …本質的な色や質は変わらないが…
 …ナルトの心に呼応する様に…
 …色合い(いろ)を変えるナルトの色彩(いろ)…

 …『木ノ葉の奥』と呼ばれる存在達が…『定まりたる名持たぬ』と言われ…

 …その時々に応じて…
 …忍ぶ者として…
 …様々に変わる様に… 

 …現在蒼から碧へと色を変えたナルトの瞳を見つめて…

                                  ―続く― 
 
 ―あとがき―
 皆様どうもRINですm(_ _)m
 諸般の事情により…遅くなりましたが…ようやく『追跡任務』の続きをUP出来ました。
 さてこの『追跡任務』ですが…多分次回でひとまず終わる事となると思います…
 …こちらはあくまで本編補足エピソードですので…
 …それでは次回はもう少し早くUP出来ると思います。

                        ―それではまたの機会に―RIN―