「…ま…まぶしいっス…なんなんっスか!?この光…」
 「…解らないわ…でも…アレンくん…大丈夫かしら…」
 …リナリーとチャオジーが口々にそう言う…


 
運命の分岐(わかれみち)
           ―第1章―
              ―第2話―



 「!アレンくん!」
 光が晴れた時…そこに立つアレンの姿にリナリーは表情を明るくし、安堵の声を上げる。
 …そのリナリーの声が…聞こえなかったのか…アレンは…どこか…暗い表情で…目を伏せて…ゆっくりと…その…黒白が反転した『剣』に右手を伸ばす…
 「…アレン…くん…?…アレンくん!?…どうしたのっ!?」
 …そのアレンの様子に尋常でないものを感じ…リナリーが声を上げる…

 …どうしよう…こわい…アレンくんが…どこかに行っちゃいそうで…
 「アレンくんっ!アレンくんっ!!返事をしてっ!!」
 …その…恐怖を…振り切るように…必死で叫ぶ…

 …その声に…ラビが沈み込み掛けていた…意識を浮上させる…
 
 …これ…リナリーの…声さ?…
 「…うっ…」
 …アレンを呼んでるさ?…
 「…あ…れ…?…」
 …アレン…ここに…立ってるさ…
 …じゃあ…なんで…この…リナリーの悲鳴みたいな声を…放っておくさ…?…
 …そう…考えた時…
 「…『快楽』の『ノア』…『ティキ・ミック』…」
 …それは…信じられない程…静かな…アレンの声…
 「ア…アレンッ!リナリーがっ!リナリーの声が聞こえないさっ!?」
 …なんでさ…アレン…リナリーの声…聞こえてない訳じゃないよな!?…
 「アレンッ!!」
 …振り返らない…アレンが…なんでさ!?…
 …こんなに…近くにいるんだから…聞こえてないわけないさっ!?…
 「ラビッ!ラビッ!どうしよう!アレンくんっ!どうしちゃったの!?」
 …俺に気付いたらしいリナリーが…もう泣き出して…
 …どうしたんさよ…アレン…
 …泣いてるリナリー…放っとくなんて…アレンらしくないさ…
 「リナリー…俺にも…わからないさ…って…あれ…リナリーアレンの『剣』…あれ…」
 「…わからないの…なんだか…突然アレンくんの『剣』がひとりでに中に浮いて…それから…あんな風に…」
 …リナリーが頭を振りながらそう言う…
 …どういう…ことさ…あれ…『あの剣』…あれじゃあ…まるで…
 …まさか…そんな馬鹿なことないさ…気の…所為さ…
 …頭を振って…一瞬過ぎった…その考えを俺は振り払う…

 アレンは『剣』を掴む…
 …そして…ゆっくりと…『ティキ・ミック』の傍に行き…
 「…ここまでです…」
 …そう言って…
 ―ザシュ!
 …刺し貫く…
 「…暴走する『ノア』の遺伝子よ…鎮まれ…そして…再び目覚めよ…『ノアの快楽を受け継ぐ子供』…『ティキ・ミック』よ…」
 ―カッ!
 …再び黒と白の閃光(ひかり)…

 …そうして…それが晴れた時…

 …そこには…

 …『左手』の『発動』を解いたアレンと…アレンに負ぶさるような形になって…支えられている…元の姿に戻った…意識を失った…ティキ・ミックがいた…

                                            ―続く―