「…アレンくん…アレンくん…」
…待って…行かないで…
「…おい…アレン…リナリー泣いてるんさよ…」
「…あっ…アレンさん…本当に悪魔なんすか?違うんでしょ?冗談きついっすよ…」
…ラビとチャオジーも口々に言う…
「…アレンくん…お願い…こっちを向いて…」
…どうして?…アレンくん…
運命の分岐(わかれみち)
―第2章―
―第1話―
…リナリー…泣かないで…もう…それも言えない…
…その…資格が…僕にはない…
「…ああ…忘れるところだった…」
…そう言って…僕は…耳に付けた通信機を外す…
…そして…後ろ手に放り投げる…
…彼等の方は…見ない…
…正直…もう…ポーカーフェイスを続けられる…自信がない…
「…これは?」
「…アジア支部のバクさんが作ったという、新型の通信機です…最初に方舟に乗る前に渡されました…色々あって…すっかり忘れてましたけど…」
…当然のようにラビに聞かれ…そう答える…
「…持って帰って下さい…もう僕には不要のモノです」
「…アレン…くん…」
…涙声の…リナリーの声…
「…アレン…本気さ?それは本気で言ってるのか!?」
「…何度も言ってるでしょ…さっさと行ったらどうなんです?早くしないと方舟がまた崩れだしますよ?」
…落ち着け…悟られるな…声だけなら…まだ装える…
「…ならアレン…こっち向けよ…こっちを向いて…オレらの方見て言って見ろよっ!!」
…ドクン…
「…はあ…話しになりませんね…あなた方の顔を見たくないと、そう言っているんですよ?僕は…」
…ラビ…君は本当に…僕の痛いところをつく…
「…もう…僕には…君らとまともに話すつもりなんかないんです…君らがそこでぐずぐずするのは君らの勝手ですからね…好きにしたらいい…僕は…ティキが重いから迎えが来るまで待とうかと思ってましたが…いつまでもここにあなた方がいて…しつこく付きまとわれるくらいなら…ティキを引きずってでも帰りますよ…可愛い妹が僕の帰りを待っているんですから…」
…そう言って…僕はすたすたと歩き始める…途中でティキの襟首掴んで…
「…ア…アレン…」
「…アレン…く…ん…」
…ラビとリナリーの…その声に…僕は振り向かない…
「…行きますよ…レロ…」
「はいレロ!アレンたま!」
レロがとても嬉しそうに返事をして、僕についてくる…
…僕は…
…歩く…『ノア』へと還る為に…
…さよなら…みんな…
―続く―