「アレンvどこに行くのですカ?」
 ロードと別れ部屋から出ると、其処には千年公がいた。
 「……千年公…」
 …やっぱり…『彼』には隠せないのか…
 …そう思いながら…何処に行くのかを話す…隠しても無意味だから…


 
運命の分岐(わかれみち)
           ―第2章―
              ―第5話―
 


 …時間軸が止まっているという、アレンの言葉の通りに『方舟』の中は、崩壊しかけた途中の状態を表すかのように、瓦礫などが空中で不自然に停止していた。

 その空中に浮かぶ瓦礫の一つにラビはソッと触れてみる。
 「…動かない…なんてことさ…」
 …これは…浮いているんじゃないさ…『停止』している…
 …まるで…ミランダの『能力』のように…
 …だとしたら…
 …アレンが言っていた『時間軸そのものが一時的に停止している』というのは、本当ということになるさ…
 …アレンがノアかどうかはともかく、この事は本当だった…と言うことは…
 ……あっ!そうさっ!!
 「リナリー!」
 アレンの言葉の中の重要さに気付き、自らの思考に沈んでいた意識を引き上げ、ラビは振り向きリナリーに呼び掛ける。
 …ずっと座り込んで、泣き続けているリナリーに。

 「…うっ…うっ…ア…アレン…く…ん…うっ…」
 「…リナリー…気持ちは分かるけど…いつまでも泣いてちゃ駄目さ…アレンが言ってただろ…ここの崩壊が止まってるのは一時的なモノだって…それはつまりその内また崩壊が始まるってことさ…アレンが言ってた『出口』のことも、ユウやクロちゃんのこともあるし…この場に留まるべきじゃないさ」
 泣き続けるリナリーにラビは片膝を付いて、この場から移動すべきだと告げる。
 …アレンが言っていた…『出口』があるという方に行ってみるべきだと…
 「…い…や…」
 フルフルとリナリーは頭を左右に振る…
 「…ッ!リナリー!」
 ラビの言葉がきつくなる。
 「!いやよっ!アレンくんを置いていくなんてっ!!」

 「なっ!リナリー!何言ってんさっ!」
 涙を零しながらキッと俺を見据え言うリナリーに、ラビは「置いて行かれたのはむしろ…」そう言い掛けて…しかしそうは言えなかった…
 …言いたくなかった…
 …俺自身もリナリーと同じく…アレンを信じたいと…何かの間違いだと思いたかったから…
 「違うわっ!アレンくんは帰ってくるっ!待ってればっ!すぐにっ!!」
 リナリーの涙混じりのその『声』はあまりに悲痛で、痛々しくも、純粋なモノだった…
 …そう信じることのできるリナリーが羨ましかった…
 …そして眩しかった…『あの時』の…この『部屋』に入る直前の…あのアレンの様に…

 「…帰ってくるわ…だってっ!…アレンくん…言ったもの…諦めないって…ここから出る時はみんな一緒だって…絶対みんなで『教団(ホーム)』に帰るって…そう…言ったもの…だから…私はここで待つの…アレンくんを…」
 …そう言ってリナリーは涙を零しながらもにっこりと微笑い…
 「…私はここでアレンくんを待ってる…」
 ―ぐすりとしゃくり上げながら、涙を拭い…もう一度にっこり微笑って言う…
 「…でも…確かにラビの言う通りね…神田とクロウリーのことは気になるもの…だから…ラビとチャオジーは神田とクロウリーを捜しに行って…」
 もう一度にっこり微笑ってリナリーはそう言った…

                                            ―続く―