…改めて頭を下げた僕に、ティエドール元帥が嘆息を吐き…
「…フウ…それじゃあそろそろ、何があったのか聞かせてくれないかい?」
…そう言って、話を戻した…
…僕は正直…なんと言うべきか…一瞬迷い…
…取り敢えず…『思い出し』そして『知った』ことを省いて話した。
…その話の途中で…リナリーが幾度か身動ぎし、僕の腕を掴む、その力が強まったのに、気付いた…
運命の分岐(わかれみち)
―第3章―
―第3話―
「……ふむ…つまり君達は気が付いたら方舟の中にいたと…」
…そう言うことでいいのかと問われ、僕は「はい」と頷いた。
「…どういう事情かは言いませんでしたが、『伯爵』は『方舟』が機能を停止したと…3時間で崩壊し、次元の狭間に吸収されて、消滅する…そう言いました…『僕等』をそうやって『消す』つもりだったようです…」
…僕がそう言うとリナリーが微かに身動ぎをした…
…微かにリナリーの視線を感じる…
…ほんとうに?そう問われているような気がするのは…
…真実総てを語っているわけではない…僕の後ろめたさゆえだろうか…
…そう…確かに『あの時』は解らなかった…
…でもいまは…解る…どういうことなのか…
…『エクソシスト』の『アレン・ウォーカー』であれば、知る筈のないことを…
…いまの僕は識っている…
…でも…それは話せない…いまは…
「…しかし君達はここにいる…それはどういうことか…伯爵の気が変わるような『何か』が『あった』のか…或いは…伯爵にも予想外のまったくのイレギュラーがおこったのか…」
…ティエドール元帥がそう言った時だった…リナリーが再び一瞬微かにビクリと震える様に身動ぎをした…
「?うん?リーなにか心当たりがあるのかい?」
…元帥も気付いたようだ…今度はさっきより動揺してる…
…否…そもそも…帰ってきた時から…ずっとリナリーは不安気だった…とっくに元帥は気付いてはいたのだろう…
「…あっ…それは…」
「『伯爵』の思惑とは別にノアが勝負を挑んできたんです、『出口』と『命』を賭けて勝負しないかと…それで5人のノアと戦いました…」
…迷うように言い淀むリナリーの言葉を…僕はそう言って遮った…『何が』あったのかを話すことによって…
「…あの後まだ二人いたのであるか?」
僕の言葉にクロウリーがそう問い掛けてくる。
神田も何気にこちらを見ている様子から、それなりに気にはなっているんだろう…
「ええ、あの後…最後の部屋にはロードとティキ・ミックがいました。僕がティキ・ミックとラビがロードとそれぞれ戦いました…」
「…イヤー!あんときは大変だったさー!ロードはどうやら真面目に戦う気はなかったらしかったんさけど…ゲームだって仕掛けてきたことがもーえらいキツイ精神攻撃でさー!…ようやく『あそこ』から出られたと思ったら…アレンの方はとっくに戦闘終わって…しかもなんかパワーアップしてたみたいだったし…」
クロウリーの言葉に頷いて答えた僕の隣に、唐突にそう言いながらラビが現れ、僕の方をチラリと見てそう言った…
―続く―