…ブックマンに引きずられる様な形で、ラビは少し離れた処に移動した…
 …恐らく…ブックマンに詳しく話すように言われてるのだろう…


 運命の分岐(わかれみち)
           ―第3章―
              ―第5話―
 


 ………………

 …沈黙が落ちる…全員がラビとブックマンの方に、暫し気を取られていた…
 ―コホンッ!
 …そしてそれを再び咳払いで、ティエドール元帥が…
 「…話を戻そうか…」
 …そう言って話を戻した…
 「…あっ…えっと…それじゃあ元帥アレンくんは臨界者になったんですか?」
 …ティエドール元帥の言葉に、リナリーが気を取り直してそう問い掛ける。
 「りんかい…なんであるか?それは?」
 クロウリーが不思議そうな顔でそう聞く。
 「…えっと…臨界者っていうのは…」
 …リナリーがそう言いおいて、説明を始める…
 「…イノセンスのシンクロ値が100を越えて、臨界点を突破したエクソシストのことを言うの…『元帥』は全員、臨界者で…臨界者は『元帥』になる『資格』を得るのよ…」
 …ちらりとリナリーが僕を見てそう言う…
 「…と言うことは…アレンは元帥になるのであるか?凄いのである!」
 …そう言ってクロウリーも僕を見る。
 「…あ…いや…えっと…」
 …何も知らず、素直に喜んでくれるクロウリーの笑顔が…眩しい…
 …なんと答えていいのか…逡巡していると…
 「…アレン?どうしたであるか?」
 …そう不思議そうに問われ…
 「……あ…いえ…急に『元帥』なんて言われたんで…その…ちょっとびっくりして…師匠の事とか思い出したりして…その…済みません…」
 …嘘ではない…
 …そう…確かに師匠の事も思い出したから…
 「…ああ…そうだったであるか…」
 …成る程と…僕の言葉にクロウリーは頷いた…
 「…でも…どうして教団と連絡を取ればはっきりするの?」
 次いでそう疑問を示したのは、ミランダさん…
 「ああ…それは…」
 …そのミランダさんの問いにも、やはりリナリーが答える…
 「ヘブラスカにはあったんでしょ?ミランダ」
 「ええ」
 確認するように、問い掛けるリナリーに、ミランダさんが頷く。
 「ヘブラスカのイノセンスである、『キューブ』は誰かが臨界点を突破すると、共鳴を起こして、適合者であるヘブラスカには『ソレ』が解るんですって…兄さんが以前そう言ってたわ」
 「…そう臨界者が現れればヘブラスカには解る、だから君が臨界点を突破したのであれば、本部では既にそのことが解っているということになるんだよ」
 …そうリナリーの説明の後に、ティエドール元帥がそう言って、僕に笑いかけた…
 …そう優しい穏やかな笑みを…

 …僕はと言えば…内心…とても複雑だった…
 …元帥やリナリーが言ったことは…実はもう大体…『解ってる』ことだった…
 …そして僕は知っていた…
 …僕が臨界点を突破し…その『力』の一部を見せてしまったからこそ…
 …尚更…『千年公』はこのまま僕を『教団』に行かせはしないだろうことを…

 …必要とあらば…この場にいる全員を皆殺しにしてでも…
 …『彼』は『僕』を連れ戻すだろう…

 …だから…

 …ごめん…リナリー…僕はやっぱり…
  
 …少しは気が紛れたのか…心なしか少し元気になった様に感じられるリナリー…
 …彼女をチラリと見て…そして心で詫びる…

 …少しでも元気が出て…良かったと思いつつも…

 …僕の所為とはいえ…否だからこそ…良かったとそう思い…

 …そしてそれでも…僕は……

 …喩え…再びリナリーを哀しませることになるのだとしても…

 …それでも…一時だけでも元気になってくれて…良かったと…

 …気持ちを変えるつもりもないのに…そう思う…

 …もう…そんな資格は…ないと…解ってはいても…

 …それでも…思ってしまう…

                                        
    ―終わり―

                             ―運命の分岐(わかれみち)―第3章―了―
                                            ―第4章に続く…