「……ふむ…そんなことがあったのか」
 ラビの話を聞き終えて、ブックマンはそう言った。
 「…ああ…でもアレンが臨界者になったって言うんなら、もうそんな心配する必要ないさね」
 後頭で手を組んで…ラビが安心したとそう笑う…
 ―ザシュッ!
 …しかし笑うラビを即座にブックマンが殴る…(…たぶん…殴ったと思われる…)
 「いっつー!なにするさっジジイ!」
 いきなり殴られたラビは、顔を押さえ抗議の声を上げる。
 「馬鹿者っ!それのどこが安心じゃ!」
 「へ?なんで?」
 ブックマンの言葉にラビが不思議そうな声を出す。
 「『イノセンスであってイノセンスでない』アレン・ウォーカーはそう言ったのであろう!ならば臨界点突破は安心材料にはならぬし、第一アレン・ウォーカーが伯爵の元に行こうとした理由が、仲間を見逃すことならば、裏を返せば、アレン・ウォーカーが伯爵の下に行かねば仲間を皆殺しにすると言うことだ、そしてもしそうであるならば、アレン・ウォーカーの性格から言って、エクソシストだノアだと言ったことは関係なく、恐らく伯爵の下へと向かうだろう」
 「なっ!ジジイそれっ!」
 ブックマンの説明にラビは目を見開く。
 「解ったらさっさとアレン・ウォーカーの傍に行けっ!恐らくリナ嬢だけでは手に負えぬっ!」
 「解ったさっ!」
 そう答えてラビは駆けだした。アレンとリナリーがいる所を目指して… 


 
運命の分岐(わかれみち)
           ―第4章―
              ―第2話―
 


 ジジイに言われて急いで戻ってきてみると、そこにはアレンはいなかった…
 …遅かったんさ?…
 …でもリナリーの様子にはさしておかしいところは無い…
 …なら…
 「リナリーっ!アレンはっ!」
 …そんなに心配はいらないのだろうか…
 …だが…
 「あっ!ラビ、ブックマンとの話は終わったの?」
 …やっぱりリナリーは普通だ…じゃあそんなに心配は…
 …いや…それでも油断はできない…
 …たったいま、それでジジイに叱り飛ばされたとこだ…
 「ああ…それで…アレンは?ちょっと急ぎの用があるんさけど…」
 …取り敢えずこう言う…
 …リナリーに心配を掛けるべきじゃない…アレンがすぐに戻ってくる可能性がある以上…リナリーに余計な心配は掛けるべきじゃ…
 「アレンくん?アレンくんならクロウリーと一緒におトイレよ、アレンくんたらっ気分が悪くなるまで我慢してたの…私に気を遣ってくれてたみたい…」
 そう言ってリナリーが少し複雑そうに笑った。
 「…なんだ…それならすぐに戻ってくるさね…」
 …それにクロちゃんも一緒なら…まあ安心さ…
 「…ええ…その筈なんだけど…でもちょっと遅いから少し心配になって来て…」
 …少し…遅い?…
 「…なんだって?」
 リナリーの言葉に目を見開き、そう口にした時だった…
 「…どうしたであるか?ラビ?そんな大きな声を出して…」
 …聞こえた声はクロちゃんの声…
 …戻ってきたのならひとまずは安心…そう思いながら、そちらを振り向いた時…
 …目を疑った…
 …其処には…クロちゃんしかいなかったから…

                                            ―続く―