―千年伯爵は上機嫌だった…

 …伯爵には『大事な捜しモノ』が『三つ』ある…
 …それは…『二つ』は伯爵にとって疎ましい存在…
 …この世から消してしまいたい存在…

 …そしていま…その『二つ』である『可能性』を秘めた存在(もの)達が…この世から消えゆこうとしている…
 …違っている可能性もあるが…確実に問題の『一つ』は消える…
 …そして自身にとって最も疎ましい存在も…
 その事実(こと)に…
 ―ニィ…と嗤う…
 
 ―千年伯爵の『大事な捜しモノ』…
 …でもその内の『二つ』は疎ましい存在(もの)…
 …では残りの『一つ』は?
 …それは『本当』に『大切』な存在(もの)…

 ―千年伯爵とノアが…二十数年前に見失い…以後捜し続けてきた…『大切な大切な子供』…

 …その『子供』の『手掛かり』を得る為に『利用価値』を持つ『ある子供』の『魂』が…もうすぐ『手』に『入る』…

 …もうじききっと『あの子』が見付かる…
 にっこりと…先程とはまったく違う嬉しげな笑みを伯爵は浮かべる…


 
―ミッシング・チャイルドの行方―
                ―序―
 


 …崩壊する方舟の中…

 …憎悪に身を任せるアレン・ウォーカー…

 …もはや仲間の声もその耳には届かず…

 …叩き込まれた筈の師の教えも、その頭には残っていない…

 …傷だらけのその身も構わず…

 …発動するイノセンス…

 …千年伯爵へと斬りかかる…

 …『憎悪』に身を任せるアレン・ウォーカーに千年伯爵が見出した『モノ』…

 …それは…『強力』な『闇』…

 …『闇』に堕ち…もはや『伯爵の声』しか聞こえなくなったアレンの姿に伯爵は笑みを浮かべる…

 …憎き『神』への『最高』の『皮肉』になると…

 …そして…もう一つ…かって一度は諦めた…ある手段…『それ』をもう一度行えるかも知れない『可能性』…
 
 …伯爵は嗤う…

 …直にもっとも疎ましい男がこの世から消えると…

 …そして…もうすぐ手に入るであろう…三年前に手に入れ損ねた『魂』…
 …その『魂』を愛する『神』を嘲り…

 …その『魂』を手に入れた後で…行うことが出来るだろう『ある手段』を思い…

 …上機嫌で笑いながら…『家』へと帰っていく…

                                            ―続く―



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